液晶TVと液晶ディスプレイって何が違う?

最近、各社から大型の液晶テレビが発表されています。これら最新型の液晶テレビとテレビチューナー搭載の液晶ディスプレイでは、何が違うのでしょうか。

どちらもTFT液晶を使っているという意味では同じですが、最新の液晶テレビは動画をきれいに再生できるように機能が追加されています。各社の製品によって搭載する機能が異なるので一概には言えませんが、輝度(明るさ)を高くして、応答速度を速くするといった工夫をしていることが多いようです。

 オフィスで液晶ディスプレイを使う分には高輝度なものでなくても用は足りますが、動画を鮮やかに再生するには明るいディスプレイが望まれます。パソコン用は200〜300カンデラ/平方メートル(cd/m2)ですが、液晶テレビでは450〜500cd/m2といった明るいパネルを使います。

 液晶の場合には動画を滑らかに再生する工夫も必要になります。液晶パネルでは、液晶分子がバックライトの光のオン/オフを制御するシャッターの役割を担いますが、電圧をかけて実際にシャッターが閉じるまでにはある程度の時間がかかります。画面切り替えの速度が、パネルに送られてくる映像について来られなければ、残像が残ったり、尾を引く感じに見えます。

 この問題を解決するため、液晶テレビの高額製品では、画面変化時に通常より高い電圧をかけることで高速な応答速度を実現する機能(オーバードライブ技術)を組み込んでいます。これによって13〜16msといった、速い応答速度を実現しています。ちなみに通常の液晶は16〜40ms程度です。

●動画を滑らかに再生するために各社が工夫を凝らす
液晶テレビ
日立製作所
W28-L5000
液晶ディスプレイ
シャープ
Crisia LL-M17W1
オーバードライブ技術(図を参照)や黒挿入技術を取り入れ、残像感やぼやけを大幅に低減しているメニューの「ツール」 同社の液晶テレビAQUOSの機能を取り入れ、液晶テレビ並みの画質を実現。オーバードライブ技術は非搭載
●オーバードライブ技術で応答速度を改善

 ただし、液晶はCRTと構造そのものが違います。CRTが一瞬だけ映像が表示された後は次の画面が表示されるまでは暗い状態なのに対して(インパルス型)、液晶では現在の画面が次の画面に切り替わるまで表示され続けます(ホールド型)。この違いのために、単純に応答速度だけを速くしただけでは残像感を解消できません。日立製作所では、各フレームの変わり目に黒い映像を差し込んで残像感を減らす工夫(黒挿入技術)を取り入れています。

 各社ともテレビ映像をより鮮明に表示するために、大型モデルを中心に、輝度信号(Y)と色信号(C)を分離してカラーノイズを減らすY/C分離機能などを追加しています。

 最近ではパソコン向け液晶ディスプレイでもテレビ再生を意識した製品が登場しています。シャープのテレビチューナー付き液晶ディスプレイ「Crisia LL-M17W1」は、400cd/m2の明るいパネルを採用、Y/C分離機能などの画質を向上させる機能を盛り込んでいます。