「竜門古鎮」は、浙江省の省都・杭州から車で一時間半の所にあり、明や清の時代の街並みが今も残り、人々も昔ながらの生活を営んでいる、この集落をそのまま開放した異色の
観光名所に育っている。
 こに住んでいるのは三国志で有名な呉の国の初代皇帝、孫権の末裔とされる人たで、住民約七千人の九割の姓が「孫」だという。 
 集落は水墨画のように質素で静かなたたずまいだった。中心地の通りは幅五mほどだろうか。こぢんまりした雑貨店が数軒あるだけで、観光客向けの土産店や飲食店はまるで見当
たらない。地元の人たちがのんびり歩いている様子は、一昔前の日本の農村を思い起こしてくれる。
 地元の女性ガイドによると、集落では現代風の建築物は建てられない。その代わり、自宅の修復などには行政から補助金が出るという。また、住民の生業は主に農業で、副業にバド
ミントンラケットのガット(網)張りをしているお宅を何軒か見かけた。しかし、暮らし向きは豊かとはいえないが、地元の人々はのんびりとしており、決してあくせくしている様子は無かった。
 集落の一角には長老たちが重要会議を開く建物があり、孫権の肖像画や家系図を掲げている。一族には科挙(清代まで続いた官僚登用試験)でトップだった人もいたそうです。 昔
ながらの街並みと人々の素朴な暮らし。猛烈な経済発展が続く中国では、ここはもう「懐かしさ」の対象らしい。競争に疲れた上海や杭州の都会人が、ここに「癒やし」を求めて車を飛ば
して来るのだという。