「三国志」に登場する武将で、優れた才能を発揮した人物として知られる諸葛孔明の子孫が代々住み続ける村が、中国・浙江省の中西部、蘭渓市にある、
諸葛八卦村だ。
 省都・杭州市から、高速道と一般道を車で約3時間走り低い山あいに広がる田園風景の中に諸葛八卦(はつけ)村は姿を現した。
 白壁の家並みの間を縫うつづら折りの細い石畳。路地の開け放たれた戸口から薄暗い屋内をのぞくと、お年寄りたちがマージャンに興じている。道端には、
鳥の羽根で作ったうちわや木彫りの飾り物など土産物を売る人もいるが、商売熱心というわけでもなく、とにかくのんびりと、ずっと昔から時間がゆっくりと流
れているような風情の村だ。
 600年前、諸葛孔明の27代目に当たる子孫がこの地を訪れ「風水学的に良い」とされたことから開拓したのが村の始まりという。中心部にある池から八本
の小道が放射線状に延び、村全体が八角形の構造となっているのが特徴。
 諸葛孔明を記念する大公堂など、明や清時代の建築物も数多く残る。タイムスリップしたかのような路地をさまよっているうちに、いつしか自分が今、どこに
いるのかさえ見失ってしまう。この村には「迷宮」という言葉がぴったりだ。今もここに住み続ける子孫の多くが諸葛姓だ。